FL Studioにデモ版が付属するプラグイン音源。
FL Studioの既存の(デモ版が付属する)プラグイン音源「Harmless」の後継という位置づけで、確か2011/08頃リリース。セールで割引で買える場合もあるが、真正面から買うと$149。
減算方式の皮をかぶった加算方式シンセとのことで、「加減算方式シンセサイザ」という呼び方を売りにしてるらしい(画面的には、ほんとに「減算的なインターフェイス」が画面の上半分にかぶさってる)。
「more is more(=less is moreでもsimple is bestでもない)」を旨とし、キャッチフレーズは「nothing else to add(もう足すものはない)」、そのマニュアルは64kbytesにも及ぶテキストとなっている。
……が、使いやすさは徹底的に考えてるということのようだ。
- 加算方式シンセシスエンジン:減算方式っぽい外見だが、その実内部では1音辺り520本(512?9オクターブまでは見た)ものサイン波(partials)の合成、加工をリアルタイムで行なえる。減算の対象は「生成した音」ではなく「音にする前のデータ」であるのが特徴。
- いろいろなやり方で音作り:減算方式のほか、サンプリングした音声データをいきなりサイン波の集合に分解したり、それをイメージとして入出力して画像編集ソフトでシンセサイズも可能。
- フツウっぽいエフェクタ:(変態的)高機能シンセだが、表の顔はpitch(shift,legato,porta), filter(+resonance), phaser, unison, pluck?, blur??等、その道の人なら見慣れたエフェクタが並んでてフツウに使える(らしいがその道の人じゃないのでよくわからない)。裏の顔は画面右下の領域に集まっててENV/IMG/FX/ADVの四重の仮面になってる。
- 自由度が高いエンベロープ:設定可能な、およそあらゆる数値をエンベロープとして設定できる。エンベロープは多関節でうねうね描ける。「ピッチを変更するエンベロープひとつで『1キーでNyan catを前奏から演奏しきって無限リピートする音』」とか狂ったものも作れる。
動作が軽く、「ライブパフォーマンスにも楽勝で使える(意訳)」と謳っている。まぁ、これは使う機能による(リサンプラを使えばいくらでも読み込みを重くできるし、余分なハーモニクスを出せば狙ってCPU負荷をを上げることもできる)みたいだけど実際相当軽い。
画面右にWave Candyのスペクトルアナライザっぽいのが表示できるのが特徴だが、これは「出た音を見てる」んじゃなく「これからシンセエンジンに送るデータを視覚化してる」ということらしい。表示は単音に対してで、和音を演奏しても単音のスペクトルが出る。
あくまでデジタル。どこまでもデジタル。当たり前だがとても綺麗なスペクトルが描かれる。デジタルであることを誇りとし、正確。そして軽い。
参考
英語で:
- harmony=音楽でおなじみの「調和」。和声。
- harmonic=和声的な。
- less=より少ない。
- more=より多い。
- harm=害するという動詞
- harmless=害がない。人畜無害な。
- armor=鎧(ヨロイ)
- er=○○する人。
辺りが頭に入ってると「どういう思想の音源か」、「イメージキャラが何でああいう装備か」、辺りと結びつくかも知れない(あとはフルアーマーガンダムとかアーマードバルキリーとかいった無敵感のイメージ)。
オフィシャルのYoutubeのチャンネルのビデオ「Harmor | Additive Synthesis Terms(Harmorビデオ:加算合成の用語解説)」では「HarmorのHarmはHarmony(ないしharmonics)のHarm」とか言われてたような気がする(1:00付近)。
FL Studio用plug-inだが、VSTi版もある。FL Studio用のは、最近の(2011/09あたり以降)FL Studioには「デモ版」がバンドルされてて、購入手続きしてライセンスキーだけ手に入れればそれが遜色ない形の製品版になる。
VSTi版は多分ダウンロード販売専用。別途ダウンロードする必要があるはずだけど、ランセンス的には「FL付属のはFLでしか使えなくてあのDAWで使うためにはこのBOXだとVSTi版ライセンスを別途買わないとダメだけどアレはVSTiも付いてるから」とかややこしいことはなくて1つライセンスがあればどっちも使えるっぽい。
ちょっとわかりにくいがFL内蔵のじゃなくダウンロード版をインストールすればVSTiのほかにスタンドアロンでも動作する。
関連項目
【加算合成方式】【減算合成方式】【Harmless】【Harmorの資料】